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JOURNAL

2025/02/16 02:40

モレスキンに描いた図案を眺めながら、これを立体にしてみようと思いついた。
ドイツで生まれた「ポリマークレイ」という樹脂で作られた粘土を素材として使いたいと色彩構成の図案を思い出す前から決めていたので、すんなりとこの粘土を使ってあの図案の色と形をひとつひとつ再現してみようとなった。


粘土にはいろんな色があるのだが、もちろんえのぐで作った色がそのままドンピシャで在ることはない。

そういうわけで、一色一色粘土の重さを測って比率をメモしながら、いろんな色の粘土を混ぜて限りなくえのぐで作った色に近い色の粘土を作ってみた。しかし、やはり市販のスケールで重さを正確に測ることは難しく、同じ配分で混色した粘土を複製しようとも微妙に違う色になってしまう。そこで、ほとんど狂いの出ない方法を思いつき、現在はその方法で混色している。(隠すほど難しい方法ではないが、一旦ここでは伏せておく。)


初めはいろんな色の粘土を混色していたのだが、これも違う方法を考えることになる。問題点は、混ぜていくうちに次何を混ぜるべきかが考えづらいところと、再度混色するときにとても面倒なこと。たどり着いたのは、「3原色で混ぜる」という方法。現在は、一部例外はあれど基本的に「赤」「青」「黄」のみで混色している。さらに、図案を絵具で制作するときも同じく「赤」「青」「黄」のえのぐのみで描いている。こうすることで、RGBのバーを動かす感覚でやり易く、何より修正が効きやすい。色の勉強にもなって、結構楽しい作業だ。
色が出来上がったら次はどう成形していくかを考える。


パスタマシンのような機械でくるくるハンドルを回してのばした粘土を成形する。成形の方法はいろいろ試した結果、オリジナルの型で抜くことに決定した。
そういうわけで、薄いアルミ板を切り分けて、ペンチを駆使してひとつひとつ型まで手作りした。ただ、こちらも現在は、細かい図案や型数が増えたことから3Dプリンターを導入している。こうして出来上がったオリジナル型はずらっと並べるとなんともかわいい。

そこから、1番地味で大事な工程、研磨作業に入る。かなり試行錯誤して、やっと理想のクオリティになるような方法に辿り着いた、1番悩まされた工程である。最後は、手作業と機械での研磨を併用することに落ち着いた。


はじめは、「モビール」をモチーフに制作をはじめた。耳に小さな色のパーツがモビールのようにそれぞれ揺れているのが面白い。図案と粘土を用いたこの作品群を「enogu(えのぐ)」コレクションと名付けて、2021年から作り続けている。


その後、あたまにえのぐが着いているのも可愛いじゃないかとヘアアクセサリーを作ったり、9ピンの金具が悪目立ちしているのでは、とビーズと組み合わせたり、色々な可能性を探るのが面白い。最近は、年齢・性別問わず使えるものを作りたいという思いから、当初モチーフとしていた「モビール」を実際に作ってみた。空間にチューブから飛び出したえのぐが浮かんでいるようで、色や形の重なりがくるくると変わるのも面白く、ずっとみていられる。今後も、アクセサリーだけでなく生活の中で心を豊かにするような作品を作っていきたい。


Hi, thereでは、小さなスタジオでじっくり時間をかけて丁寧に手作りできるからこそ生まれる美しさや価値を大事にしたい。
作品の生まれた背景や試行錯誤といったストーリーも一緒に楽しんでもらえたら本望だ。