JOURNAL
2025/02/16 01:54
モレスキンのスケッチブックを買った。
特に目的はなく、文房具好きのコレクションの感覚で買ったこのスケッチブックに何を描こうかと、家に帰ってから考えた。
せっかく紙もしっかりしていて裏写りもしにくいのだから、えのぐを使いたいなと考えた。
透明水彩は日頃使っていて面白くないしな。じゃあ、アクリルガッシュはどうだろうか。などと考えていたら、大学入学まもなく出された色彩構成と平面構成の課題を思い出した。
その時の自分としてはかなり時間をかけて、夜中にコツコツ仕上げた作品。翌日、講評でみんなの作品と一緒に並べた時、自分の作品の色彩が全然きれいでないことに気づく。実際、評価もあまりよくなく、私って色彩感覚よくないんだなと思い知った思い出の課題。
その時からなんとなく「色」に苦手意識があったのだけれど、のちに透明水彩絵具でイラストを描くようになったり、いろんな作品を見たり作ったりしているうちにいつの間にか上達していた。というのも、卒業制作の講評で作品の「色づかい」をとても褒めてもらえたのだ。それで、4年の時を経てようやく克服できたと胸を張っていいのかなと思えた。
そんなことを思い出しながら、あの課題へのリベンジに燃えつつ、このかっこいいモレスキンのスケッチブックに、アクリルガッシュで色彩・平面構成を描いていこうと決めた。
adobeなどのソフトをはじめとしてデジタルにすっかり慣れてしまうと、たまにコマンド+Zで「元に戻す」ができないことに恐怖を覚えたりする。特に、油彩と違って水彩は基本的に大胆な修正が効かない。このスケッチブックでは下図は描かず、えのぐを感覚だけで乗せて即興で図案を制作することをルールにした。
この即興性がとても面白い。一色一色乗せながら、次は何色が欲しいだろうか、とか。この色は少なめ、この色は多めに使ってみよう、とか。感覚だけで描いていく。そうして出来上がった図案がenoguシリーズのもとになっている。
元々、この図案から何かを作ろうなんて考えていなかった。けれど、ロンドン芸術大学の留学中にどんな小さな発見やどうでも良さげなスケッチでも、立派なアイデアの種になることを学んだこともあって、Hi, thereの1作品目を考えている時にふと、あのモレスキンの図案を思い出したのだ。
アクセサリーになることを意図していない図案が、アクセサリーになったとき、どんな表情をもつのだろうと気になった。
アクセサリーを作ろうと思って作った試作のアクセサリーはどれもどこかで見たことのある形だし、シリーズ化させるにも限度を感じた。何より自分が飽きそうだ。けれど、意図せずに描いた、しかも一発描きでもう2度と同じ色も作れないし同じ形にもならない偶然性の塊のようなこの図案をどうにかしてアクセサリーにしたら、自分の脳みそでは思いつかない面白い作品になる予感がした。
しかも、この図案は無限に作れる。よって結構なボリュームのシリーズが生まれるだろうし、いつの日かズラッと全シリーズのアクセサリーを並べて展示なんてしてみたらカッコいいんじゃないだろうか。各シリーズごとに図案の原画を額装して飾ったりして。これは面白そうだ、となってenoguシリーズの構想が固まった。(後編に続く)